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カールスルーエは道に迷わない街だと思ったら、迷った

シュツットガルトから列車で約1時間ライン川方向に向かうと着くカールスルーエという都市があります。ここにはカールスルーエ工科大学があり、ここの卒業生だという人が何人かかつての職場に居ました。彼らはいわゆる“できるドイツ人社員”だったので、さぞかし高尚な大学がここにあるのだろうと、以前から興味を持っていた街です。

カールスルーエの駅に着いたのは午後2時頃。

駅前はノスタルジックな雰囲気で、路面電車の集まる停留所付近の風景はシュツットガルトよりも鄙びたムードで「日本だったらこんな街には大抵温泉があるんだが・・・」と想像してしまうようでした。

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駅前にツーリストインフォメーションがあったので、英語版の観光案内地図があるかどうか聞いてみたら、日本語もあると、日本語、中国語、ロシア語の3か国語版の案内地図を手渡してくれました。

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それによると、カールスルーエの街は今から300年前、政治にうんざりして婦人に冷たくされていた君主カール三世が、この場所にたまたま狩りに来て疲れてしまい、居眠りしながら夢を見たのがキッカケで、ここに城を築くことにしたらしいです。そして都市が出来上がり、彼はそこに単身赴任していました。単身赴任していたから冷たい奥さんと合わないで済み、本当のくつろぎが得られたのだそうです。なかなかタメになる話が日本語で書いてありました。

 

この街は城を中心に円形に、道は放射状にできています。

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だから行けば必ず城に出くわすハズだから、気楽に歩いていました。インフォメーションの人は「30分ぐらいで着きますよ」と言っていたのに、なかなかお城が見えません。

もしかしたら間違ったのではなかろうかと、横道に入ったら余計に分からなくなり、結局1時間近くかけてお城に着きました。多分私に比べて1.2倍は大きいドイツ人の歩幅で30分ということだったのでしょう。

 

その迷った甲斐あって、カールスルーエの街のイメージがだいたい掴めました。

この街は古い建物もありますが、雰囲気はモダンな感じがします。店も、そこで売られている品物もけっこうおしゃれです。

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ショッピングモールもおしゃれで、日本ブランドの店はほぼ無いので、日本を離れて遠くまで来た感じがしました。

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ところどころに意味不明ながらも芸術的オブジェもありました。この道に立っている旗のような看板のようなものはドイツ語でしか書かれていなかったから、何か分かりませんでした。

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街中には路面電車が縦横に通っていましたが、歩いて30分で着くと言われたから乗りませんでした。でも乗って来た方が良かったかもしれないです。迷い歩きしたので足が棒になりました。

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足が棒になったら、休めるところがあちこちにあるのがドイツの良いところだと思います。道から路地に入ったところに、道路脇の噴水のある場所に、どこにでもベンチが置いてあって、座ってしばらく休めるからです。

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1時間歩いてやっと城に着きましたが、あいにく化粧直しの工事中で、城の壁にはカバーがかかり、景色を楽しむにはちょっと不向きな感じになっていました。

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帰り道には市立公園に入ってみました。

中はよく整備されて、小動物園もあり、イベントも開かれているようでした。とても静かでのんびり歩くにはいいとことろです。
歩きながら妻がくしゃみしたら、通りがかりのベビーカーを押した若いドイツ人男性から「ゲズンハイト」と声をかけられたので、すかさず「ダンケ!」と挨拶しました。
ドイツではくしゃみしたときのこの挨拶は定番です。

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しかし入場料が一人8ユーロ(1100円ぐらい)しました。私の住んでいる日本の地方都市の市立公園は入場料が一人200円です。それに比べたらかなり高いです。が、高いだけあって居心地がいいし、入場者はほどほどで混み合っていないのも、入場した人にとってはいいものです。

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隠れたドイツの“行くべきところ” テュービンゲン

テュービンゲン(Tübingen)はシュツットガルトから南側に直線距離なら約30キロ。鉄道では回り込むから約1時間の距離にあるやや大きな町で、テュービンゲン大学という歴史ある大学の街で大学関係者人口密度が高いらしく、連れて行ってくれたドイツ人友人が「ほらあの自転車に乗っているヤツは大学教授だ」と指さしました。「どうして分かったの?」と聞いたら「見れば分かるさ」ということでした。歴史ある街なので古くからの建物が多く残り景観も優雅。まさにここは行く前の想像より実際の方が良かったという私の経験では数少ない街でした。

テュービンゲンに到着し、駐車場の出口を出たところから古きヨーロッパの景観が始まっていました。写真の建物はノーネンハウスという名の1488年に建てられたとても古いもので、現役で使われているものです。建物の壁をよく見ると新旧の木材や漆喰が混ざり合い、何度も補修しながら使い続けている様子が覗えます。

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街中は自動車の通行が制限されているらしく、ほぼ歩行者独占の歩きやすい道。観光都市というより学生の街なのですが、ドイツ国内では住んでみたい街として人気があるようです。

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テュービンゲンはドイツの文豪ヘルマン・ヘッセが住んでいた街でもあり、今でもヘッセが働いていたという本屋が残っています。

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ここがその本屋の入り口で、若干の古本が売られていましたが、内部は博物館になっていて、おそらくヘッセが居ただろう時代の本が棚に並べられて当時の様子を覗えるようになっていました。案内係りだと思われる人がいましたが、案内は専らドイツ語でなされるようでした。

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ヘッセの本屋の前は広場になっていて、この日は日曜日だからなのか多くの人がのびのびしていました。

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通りを少し進むと、市庁舎前の広場に出ました。市庁舎の建物はウルムでもたいへん古いものを見ましたが、ここテュービンゲンの市庁舎建物もたいへん古いものです。ちょうど今補修工事をしているところだそうですが、ドイツの古い建物へのこだわりは非常に強いものがありそうです。地震が無い国だから日本よりは古い建物を残し易いとは思いますが、なにしろ築数百年という古さの建物を残して、なおかつ現役で市役所として使うというのだからたいしたものです。

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この市庁舎前広場のレストラン屋外テーブルで休みました。日本では休日のレストランは満員でテーブル席を確保するのがたいへんですが、ドイツでは旅行中、どこでもすんなりとテーブル席に着くことができました。どのお店も客の回転率をどう見ているのでしょうか?日本感覚で見るなら空き過ぎています。が、客側からすればこれはとても便利なころです。

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休憩も終わって市庁舎前広場から坂道を上ってテュービンゲン城に行きました。

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歩いて数分で着いてしまう距離です。途中に「これは日本人なら喜ぶだろうな!」と思うホテルがありました。ホテルアムシュロス(Hotel Am Schloss)です。

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窓には花が飾られ、日本人の女性にはきっと人気だろうと直感しました。レストラン主体のこじんまりしたホテルだそうで、入ってはみませんでしたがネットの旅行サイトをググってみると部屋もこぎれいみたい。次回もしテュービンゲンに来るならここに泊まりたいと思いました。

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そのホテルアムシュロスからテュービンゲン城の入り口はもう見えています。
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高台からの眺めは絶景で、中世に時間を遡ったような気分になります。

これは城から南側。写真に見えていませんが、下にはネッカー川が流れています。

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これが北側。正面の大きな古い建物は大学病院で、今は主力病院は別の近代的建物へ移動したようですが、今でもこの古い建物は使われているそうです。

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ちなみに景色を映した動画↓↓

城壁の中に入ってみると、ここがテュービンゲン大学の校舎として使われていることが分かりました。所々にドアがあり、研究室の名前が書いてあります。こうやって歴史的遺産を実用的な施設として使っているから整備するためのお金も出て、歴史遺産が守れるのでしょう。いいアイデアだと思います。

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城の出口はこんな地下に続くトンネルみたいになっています。ここを抜けて階段を降りるとネッカー川にかかる橋の近くに出てきます。

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ネッカー川には、写真のような小舟が何艘か見え、ちょうどベニスのゴンドラみたいな光景です。これがテュービンゲン観光の有名なひとつになっているらしいです。この川辺は大きな木が茂る公園や遊歩道があり、同じく南ドイツの有名な観光地のバーデン・バーデンの景色にちょっと似た印象がありました。

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公園の一角にはこのように子供が遊べる遊具がある広場があります。ブランコや滑り台など日本でもお馴染みの遊具があり、多くの人がここに子供を遊ばせに来ていました。ドイツ人の他にいろいろな人種の人がいました。多分彼らがここに子供を遊ばせに来るということはテュービンゲンに住んでいるのでしょう。地方都市だから生粋のドイツ人ばかりかと想像していましたが、かなりいろいろな国からここに来て住んでいるみたいです。知人の日本人以外には明らかな日本人には会いませんでしたが、東洋人はこの公園で何人も見かけました。

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テュービンゲンに住むドイツ人と日本人の夫婦も、ここによく子供を遊ばせに来るそうです。この日も彼らの子どもが遊びに夢中になって「まだ帰らない!」と頑張るので、たいへんでした。

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ネッカー川に沿って、市の中心部まで遊歩道があり、大きな並木があって散歩するにはこの上ない道です。所々にベンチもあり、川の対岸の景色はノスタルジックにヨーロッパを満喫させてくれて最高でした。

写真の川辺にあるとんがり屋根の黄色い家は、ドイツの有名な詩人ヘルダーリン(Friedrich Hölderlin)がかつて住んでいた家です。彼はテュービンゲン大学出身で、卒業後は詩作などを行っていましたがやがて気が狂い、それでもこの建物 ヘルダーリン塔の中で詩を作り続けたのだそうです。

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そこから少し先に川にかかる立派な橋があり、ここはテュービンゲン観光のナイスビューポイントとして有名な場所になっています。ここからヘルダーリン塔方向を眺めて、ここで記念撮影をするのがテュービンゲン観光の定番だそうです。

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テュービンゲンは古い町並みが美しく、それらを観て回るのにも静かなカフェやレストランでくつろぐにも適していて、しばらくのんびりしたい人はここを訪れてみたら満足できると私は思います。テュービンゲンに住む知人は、ここはコンサバティブ(保守的)な考えの人も多いと言っていましたし、冬はかなり寒くて雪も降るらしいですから長く住むにはそれなりの根性が要るのかもしれません。しかし旅行者には街に喧噪が無く、こじんまりして分かり易い町並みは、街歩き向きだと思いました。