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スリとの付き合い方を学んだケルン

ドイツのケルンは第二次大戦中にイギリス空軍が、尖んがりお屋根の目印にした大聖堂(ドーム)があることで有名な観光都市ですが、地元に長く住む日本人友人に言わせると「ケルンは大聖堂の他にはこれと言って見るところがない・・・」と酷評でした。
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それでもかつて出張ついでに行った大聖堂を妻に見せたくて早朝にフランクフルト中央駅を出発し、ケルンに10時前に着きました。

ケルン大聖堂は駅の真ん前!
駅の中からその姿が見えています。
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大聖堂見学は・・・ガイドブックに譲ることにして省略し、その後街を歩いていたときにスリに遭ったお話を書くことにします。

ケルンで私は生まれて初めてスリに遭い、現金、しかも紙幣だけ60ユーロ、中年の見知らぬおばさんに持って行かれました。

そのおばさんスリに遭遇した現場はここ!下の写真の場所です。帰り道に撮りました。建物は本屋ですからヤバイ街角でもなんでもないところ。
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メイン道路で、しかも大聖堂から駅を左に見ながら北方向へ約5分のところにその被害現場があります。人通りの少ない場所。しかし多くの観光客はこの道を通りライン川沿いの遊歩道へ抜けるはず。そういう場所にスリが出現しました。

最初、彼女(スリのおばさん)との出会いはこうでした。
妻とライン川遊歩道に向け歩行中に「寄付してくれ」と英語でしゃべりかける、背の低いロングスカート姿の年輩女性が後ろから現れました。その直前に別の女性が「赤ちゃんに寄付を」とバラの花を売りつけよう?としたので追い払った後だったため、また追い払おうと、わざと日本語で「いりません」「やりません」と言い続けていたら・・・

彼女は私の目の前にふさがり「接近プレー」をしはじめました。
私は下の写真のように、前にウェストバックをしていました。
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彼女の手には新聞の四つ折りを持ち「ここを見てくれ」と私の腹の前のウェストバックの上にその新聞を載せ・・・
こんな感じです。このときはまだ気づきませんでしたが、新聞の下にウェストバックがスッポリ隠れて、見えない状態(写真は説明のために撮ったもの)。
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実は!その新聞の下で、彼女の指先がまるで指先に目があるように動き回り、ウェストバックからたくみに財布だけ音もなく抜き去り、次にズボンのポケットあたりを調査しはじめた・・・ここで「あ!こいつスリだ!」と私は気づき、新聞を手で叩き落としたものの、もうあとの祭り状態。

スリのおばさんは、すっと、声もなく消え去りました。
ウェストバックを見るとチャックはちゃんと締まっている。まさかやられていないよな??と、バッグの中を調べると・・財布が無い!
気づくと地面に財布が落ちていて、中をあらためると紙幣だけが無くなっていました。財布は落ちていたのではなく、妻の話では、財布が足元に飛んできた、と言うのです。スリが返してくれたのか!????

その頃、犯人のおばさんはちょうど道路を渡って立ち去るところ。瞬間的に妻がその後を追おうとしましたが・・・私は「やめとけ」と言いました。

60ユーロは約1万円。この日一日の観光予算のほぼ全額です。なのでウェストバックに入れていました。
そのような大金!?をすられたからムカついたし、恐ろしいし場所だな!と恐怖したし、お金とられたなんて面目ないし・・・その後に行ったチョコレート博物館見学は少しも楽しくありませんでした。

『ちくしょう!!どうしようか・・・』と考え・・・
こんな経験も観光のひとつかもしれない、トラベル イズ トラブル!と言うではないか。せっかく「スリに遭った」という警察に言える正当理由ができたことだし、ドイツ警察にこれを届け出ることにしました。おそらく失った現金はもう帰って来ないけど、いつもはできないドイツ警察とのコミュニケーション経験になるかと・・・

とは言うものの、最初は交番がどこにあるか?地図を見ても分かりません。こんな時にはツーリストインフォメーションに行けばなんとかなるかと、「i」印を探して交番の場所を聞きました。「ケルン駅を入って左に突き当たるまで行き、そこを右に曲がった左側にあるわよ」と、「i」印のお姉さんはそう教えてくれました。

行ってみると交番は鉄のドアが閉まり、インターホンを押すと、やりとりの会話もなく鍵がカチャッと開きました。ガラス越しに警察官がひとり。
たどたどしい英語で事件の説明をし、私は証明書を発行してもらおうとしました。

警察官は「パスポートを見せて、ほほー日本から来たの・・・」と興味深そうに私の経歴を見て「で、スリに遭ったときの状況を聞かせてくれ」と言いました。

私は場所とか時間とか、新聞紙でウェストバックを隠されて・・・とか説明をしました。警察官はその説明を真剣に聞いてくれて「新聞は何新聞だった?」とか「その女はどこの国の人?」とか、答えられようもない質問までしてきました。「わからない」「どこの国の人かなんて・・・でも典型的ドイツ人ではなかった」などと、しばらく英語で悪戦苦闘。でもその結果、実際にスリに遭ったことは警察官に信じてもらえました。

「分かったよ・・・だけど俺はもう休憩時間だ・・・だから次の担当に交代するから、その人によく分かるように、今喋ったことをこの用紙に英語で書いてくれ」警察官はそう言い終えると席を立ちました。

まるで英語検定の筆記試験みたい・・・

スマホ片手に英語で説明文を書き、次の警察官に渡すと、また先ほどと同じような質疑応答を何度か繰り返した後、やっと被害証明書を発行してくれました。
パソコンからプリントアウトしたものに、ケルン駅警察詰所のハンコがバン!と押された立派?なものです。

それを持ってフランクフルトに帰った翌日・・・
一応犯罪に遭ったのだから・・・と領事館にも行ってみましたが、そこはパスポートを無くしたり盗られた場合に行くべき場所で「ウチに言われても何もできませんが・・・せっかく来てくれたから・・・」と言われてドイツのスリの現状などをいろいろご教授いただきました。

東欧のある国の一部の人が専門にスリ業をヨーロッパで行っているらしいです。その国の名はケルンの警察官も口にしましたが、その国全部が犯罪国家のように勘違いされるのもマズいから書きませんが、一部の人達は都市を移動しながらスリをして生計をたてているらしいです。だからプロです。

特に女性のスリの場合、ロングスカートを履いているのが一般的なスタイルのようなので、街中や駅で手に新聞紙を持って「寄付を・・・」などと近寄ってくる人には要注意です!

ただ、注意すると言っても、実際にその方が来てしまったら、できる注意はウェストバッグを自分の手で押さえて守るぐらい。私はその日のお金をウェストバッグに、そのほかのお金を別のところに隠し持っていたので最悪のスッテンテンにはならなくて済みました。大事なお金はパンツの中とかにしまっておくようにしたいものです。

それと、領事館の人の話では「犯人をゼッタイに追わないこと」が鉄則だそうです。
彼らはグループ行動で、もし追ったら仲間が出てきてもっとヒドイ目に遭わされたかもしれません。

ちなみに盗られた現金は旅行保険では戻りません。私の加入した旅行保険のみならず、現金を補償してくれる旅行保険は、ひとつも存在しないんです。