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疑る価値がある「老後の生活費は、いくらかかる」という記事

      2017/05/07

グーグルアラートに「老後」を入力しておくと、老後に関するさまざまな記事がひっかかります。その中で目立つ記事は「老後の生活費はこれだけかかる」とか「老後の貯蓄は最低これだけ必要だ」などです。実に件数多くひっかかりますから、そのような記事を読んでいると、だんだん頭にそこに書かれていた金額が刷り込まれ、架空の老後生活費相場のように思い込み、その金額の生活費目途が立たない限り「俺は働き続けなければならない」と思い込んでしまうかもしれません。

では「老後の生活費はこれだけかかる」という趣旨の記事は、読まない方がいいのでしょうか?私は、書かれた内容を疑ってみる、という読み方をすることがベストだと思います。

「老後の生活費はこれだけかかる」とか「老後の貯蓄は最低これだけ必要だ」という記事は、それを書くための根拠があります。厚労省が出典の根拠とか、保険会社が独自に調査したものなどが引用され、それを元にファイナンシャルプランナーの方などが「老後の生活費はこれだけかかる」と書くと、実に説得力ある記事になります。たぶん書かれた記事は少なくないリタイア予備軍の方々にとって老後の資金を考えるにあたって「刺激」になっているのではないでしょうか。

ただその刺激の根拠は、自分が「平均的な今のリタイアメント」だったら、という前提になるでしょう。

平均的な今のリタイアメントは、いわゆる年金逃げ切り世代の可能性があります。つまり公的年金受取額が手厚く、企業年金も運用成績がよく、60歳から厚生年金を受け取り、退職金はそれなりにいただき・・・。既にリタイアして給与所得が無い世代や、引き続き会社勤務している現在シニアの方々は、例外もあるでしょうが、まだまだ裕福なリタイアメント暮らしをしている人が思うより多いのではないか、と考えています。観光地を歩いて彼ら世代の行動を観察したり、デパ地下での購買行動を眺めていると、実に裕福を感じ、そのように見えるシニアの方々は決して珍しく見えません。

もしそのような方々が前述の「平均的な今のリタイアメント」像だったとしたら、その行動を模倣しなければ今後のリタイアメント像は確立できない、とはなりません。

その理由は・・・

1.平均的な今のリタイアメントの行動はコストが高い

インターネットを駆使できる高齢者リタイアメントは少数派です。高齢になると理解力が低下するからネットを使いにくい、という説もあるようですが、主な理由はネットそのものに親しんでいなかったから使い方が分からない、のでしょう。ただし今後のリタイア予備軍はまったく状況が異なると思われます。ネットの利用で格安のサービスが受けられるとか、短時間にネットだけで用事を完結させられる能力、というかそのような行動があたりまえになっていますから、生活コストは平均的な今のリタイアメントよりかなり下げることが難しくないと考えます。

2.今後のリタイア予備軍は、完全リタイアメントにならないで済む

これもネットの利用が前提ですが、インターネットによって自身が意識しなくても「セミリタイアメント」になることができるから、年金や貯蓄を補う、いくばくかの収入を得ることができるようになるからです。例えばネットでの株取引は、売買自体がネットで素早くできる他に、売買銘柄を決める際の情報が、やはりネットを駆使して容易にいくつも得られます。投資信託などもネットで完結できるので、資産運用のハードルが、実店舗に頼る平均的な今のリタイアメントより下がり、結果として儲けが出たら、それは生活の質の向上にあてられます。

さらにネットで「商売もどき」も可能です。
今日からでもヤフオク!で不要品を売ることができるし、メルカリなどのフリマサイトは、匿名で送付できるから住所などの個人情報も相手に知られません。なので「思ったときに即ビジネス」が可能です。

3.暮らし方によって必要な生活費は大きな差がある

上述は、今後は今までより老後生活費が落とせる、ということでしたが、そう割り切れたものでもありません。「平均的な今のリタイアメント」は平均の人物像であって、今でも平均から上にも下にも外れている人は大勢います。中学校では「平均」の他にばらつきの指標の「標準偏差」を習いましたが、ネットやニュースに登場する統計数字は、いつも平均値ばかりで「標準偏差は○円でした」みたいに書いあるのを私は見たことがありません。自身が平均的な老人になる確率はとても低いものになるでしょう。そう考えると自分の老後生活費を「老後の生活費は、いくらかかる」というような記事に頼ることは、あまり意味の無いことではないでしょうか。

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もし「老後の生活費は、いくらかかる」というような記事に頼れないとするならば・・・
二つのグループに分かれると思います。

ひとつは、頼れないなら「将来のことが分からないから不安でリタイアできない」と考える人。
ふたつめは、頼れないなら「自分で計算して、自分に限った老後生活費を調べてみよう」と思う人。

もし前者だとしたら、リタイアなどずっと先送りにして、可能な限り会社員を続けて、会社員としての楽しさを享受し続けるように工夫して努力していくべきだと考えます。定年退職ましてやその前にリタイアしてしまうアーリーリタイアでは後者の思考は必須です。そのような思考を持てない限り、貯蓄が多くてもリタイア後は心的に持たないでしょう。

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