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リタイアメントの生活改善研究ブログ

IC(インディペンデント コントラクター)という手段の使い道

      2017/05/08

2000年代初め頃、一時IC(インディペンデント コントラクター)という働き方がもてはやされました。以前私はコレをやったので経験をぶちまけてみました。はたしてICはセミリタイア向きなのでしょうか? いいえ違います。

ICとは個人事業主でありながら、ある程度の長期業務契約を企業と結び、あたかも社員のように契約した企業で業務を実行し収入を得る働き方です。このようなICという働き方はリタイアとは直接は結びつきませんが、会社勤めに比べて就業規則からフリーになれるために働き方の自由度が増し、会社勤めは嫌になった、という方々には効果もあると思われます。

私は今から8年ぐらい前に、このICとして1年3か月ほど働きましたので、その体験を踏まえてICによる「脱サラ」について書いて残そうと思います。

ICをするためのスキルとは・・・
何か特殊な業務を遂行できることだと思います

一般社員の人では対応が難しく、かつ一定期間だけ必要で、わざわざ社員として雇うほどその業務が長続きしないような場合にICのニーズがあります。

例えば新しい業務システムを導入したら、そのシステムに詳しい人を一定期間だけオフィスに居てもらうと何かと便利ですが、ずーっと居てもらう必要が無い場合などです。

私の場合は、私にすごい特殊で高等な知識があったためではありません。
その仕事をやる前まで、私はある欧米人を上司としてA社に勤めていました。ある日その欧米人上司がB社に配置転換になって私と彼はしばらく別々に働きました。私がA社を辞めたくなったとき偶然にも欧米人の彼が「おまえウチの会社来て俺を手伝わないか?」と打診されたのです。A社とB社は昔は同じ会社から別れた兄弟企業だったので、企業風土はよく似た環境。だけど欧米人の元上司は日本の商習慣や会社の事情がよく分からずに難航していました。それで彼の業務の日本人社員向け対策を私に依頼したのです。

なので企業風土も日本語も慣わしも熟知している私は「他にその仕事を引き受けられるような人がいない」からお鉢が回ってきたわけで、私の専門性も語学力もふつうレベルでOKでした。ただ「そんないつまで続くか分からない業務でおまえを社員に迎えるほど余裕はない」と会社が言うので、社員ではなく個人事業主としてICの契約を購買担当者とかわしたのでした。

ICという働き方のメリットは・・・

1.収入が高かった

一般に企業が社外コンサルに業務を委託する場合、その相場は高いです。その相場で私に出す費用も査定されたから、けっこう高く請け負うことができました。だけど高いと言ってもそれまで管理職だった私には社員時代並みです。

2.契約で決めた業務だけに特化して仕事できる

社員の場合は本来業務の他に「○○改善活動」とか「販売促進取り組み」など、あれもこれも身に降りかかってくるのが常でした。それに異動もあれば昇進して管理業務など違う専門性も要求されることにもなります。ICにはそういうものがありません。

メリットはこれだけです。

やってみて分かったのですが、かなり面倒や厄介なことが社員より多く発生しました。
そのデメリットとは・・・

1.下請けの悲哀

ICは業務請負業者の位置づけなので、契約した会社の社員と机を並べていても同僚の関係ではなく、一段下の下請け的扱いになってしまい易いです。

2.収入は高いが税金が高くなるリスクがある

ICは個人事業主なので給料ではなく売り上げです。総売り上げから経費を引けますが、ICは頭脳労働なので経費にできるものがあまりありません。給与であれば大きな給与所得控除により所得税は減らせますが、ICでは小規模企業共済をかけるとか、妻に一部業務をやらせて専従従業者にするなど他の手を打たないと所得税が高くなって手取りが社員より低くなる可能性があります。

3.税金申告に手間がかかる

確定申告は税金に有利な青色申告をするのがいいと思いますが、このためには複式簿記の帳簿をつける必要があります。パソコンソフトで複式簿記はできますが、毎日キメ細経費をつけないと税金が高くなるので必死です。これにはかなり労力をとられ「やってらんない」と思ってしまうかもです。それが嫌なら会計事務所などに頼むのも手ですが、当然ながらお金がかかります。

4.国民健康保険料が高くつく

会社の健康保険は保険料が会社と折半なのですが、個人事業主の国民健康保険は満額の年間約80万円になってしまい、高くつきます。これは控除で収入から落とせますが、それにしても80万円は会社で払う健康保険の二倍以上の額になりました。

まとめると・・・
ICとして「楽しく継続的に働く」のは。

 

1.自分に特殊ではないポピュラーな専門性があること

例えば通訳やあるソフトウェアの使い方に長けているとか。

2.信頼のおける企業とそこで業務指示者となる人が存在すること

契約が守られることが必須ですが、企業と個人事業主では力関係で個人事業主が負けるかもしれしれないので、契約が有名無実化するとさあたいへん!です。

3.税金や保険料の手続きを甘く見ないこと

このような本格的個人事業での確定申告は、毎日帳簿をつけるのに努力が多く必要です。それを怠ると、かなり高額の所得税になるし、業務によっては事業税を納めなければならず、納税貧乏になってしまいます。

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なのでサラリーマンをリタイアしてICとしてコンサル業務などを請け負うという構想は「忙しいのが好き」という方以外にはあまり適さないのではないかと私は思います。

私の意見としては、リタイアメントを軸足に置くのなら、このような仕事を選択するのではなく、趣味的なことを発展させて事業化するか、ネットを駆使するタイプの個人事業の方が「気楽でいかにもリタイアメント向き」というように思います。

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